東京地方裁判所 平成7年(ワ)20709号 判決 1997年1月29日
反訴原告
沢畑運輸株式会社
反訴被告
有限会社りーどカーステイング
ほか一名
主文
一 反訴被告らは、反訴原告に対し、連帯して金一〇万八一五〇円及びこれに対する平成五年八月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 反訴費用は、これを一〇分し、その一を反訴被告らの負担とし、その余を反訴原告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
反訴被告らは、反訴原告に対し、連帯して金四八四万五七八五円及びこれに対する平成五年八月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 争いのない事実
1 反訴原告の運転手である坂本真一が、普通貨物自動車(反訴原告所有。以下「反訴原告車」という。)を運転していたところ、平成五年八月二三日午前二時一〇分ころ、東京都墨田区横綱二―一二―一八先路上において、反訴被告有限会社りーどカーステイングの代表取締役である反訴被告沼田貞男運転の普通乗用自動車(以下「反訴被告車」という。)が、自車の車線を外れ、自車の対向車線に入つたため、反訴被告車と、反訴被告車の対向車線を走行していた反訴原告車が正面衝突した(以下「本件交通事故」という。)。
2 反訴被告らは、反訴原告に対し、本件交通事故により反訴原告に生じた損害を賠償すべき義務がある。
二 争点
1 反訴原告の主張
反訴原告は、本件交通事故により次の損害を受けた。
(一) 車両保管料 一五万五五三〇円
反訴原告は、平成五年一〇月一日から平成六年二月二八日までの一五一日間、全損となるか否かの評価をするため反訴原告車の保管を委託し、その車両保管料一五万五五三〇円を支払つた。
(二) 車両処分費 五万一五〇〇円
反訴原告は、全損と評価された反訴原告車を処分するために、車両処分費五万一五〇〇円を支払つた。
(三) 休車損害 四六三万八七五五円
(1) トラツク一台の一日当たりの売上げ 五万二七一九円
次の数式のとおり、反訴原告の本件交通事故前一年間の売上高二億一一四五万四〇〇〇円を、反訴原告の保有トラツク一一台及び三六五日で除した数字である。
211,454,000÷11÷365=52,719
(2) トラツク一台の一日当たりの経費 三八九〇円
次のアないしウのとおり、トラツク一台の一日当たりの、燃料代(オイル代を含む。)二二五八円、修繕費(修理費用及びタイヤ交換費用)一五三八円、租税公課(自動車税、重量税)九四円の合計額である。
ア 燃料代(オイル代を含む。) 二二五八円
次の数式のとおり、反訴原告の本件交通事故前一年間の燃料代(オイル代を含む。)の合計九〇六万四〇〇〇円を、反訴原告の保有トラツク一一台及び三六五日で除した数字である。
9,064,000÷11÷365=2,258
イ 修繕費(修理費用及びタイヤ交換費用) 一五三八円
次の数式のとおり、反訴原告の本件交通事故前一年間の修繕費(修理費用及びタイヤ交換費用)六一六万八〇〇〇円を、反訴原告の保有トラツク一一台及び三六五日で除した数字である。
6,168,000÷11÷365=1,538
ウ 租税公課(自動車税、重量税) 九四円
次の数式のとおり、反訴原告の保有するトラツク一台の一年間の租税公課三万四四〇〇円を、三六五日で除した数字である。
34,400÷365=94
(3) 反訴原告車の休車期間 九五日間
平成五年八月二三日(本件交通事故日)から同年一一月二五日(反訴原告車の代わりの車の引渡しを受けた日)までの期間
(4) 休車損害 四六三万八七五五円
次の数式のとおり、トラツク一台の一日当たりの売上高五万二七一九円からトラツク一台の一日当たりの経費三八九〇円を控除した数字に、反訴原告車の休車期間九五日間を乗じた数字である。
(52,719-3,890)×95=4,638,755
2 反訴被告らの主張
(一) 車両保管料
車両保管料は、反訴原告が反訴原告車の処分等をしないで放置したため発生したものであるから、本件交通事故との間に相当因果関係がない。
(二) 車両処分費
車両処分費は、本件交通事故と遭わなくても支出しなければならないものであるから、本件交通事故との間に相当因果関係がない。
(三) 休車損害
休車損害は発生していない。
第三当裁判所の判断
一 車両保管料について
1 反訴原告は、平成五年一〇月一日から平成六年二月二八日までの一五一日間、反訴原告車の保管を依頼した(乙第一号証)。
ところで、反訴原告車は、平成五年一〇月二九日、全損と評価され、反訴原告車の代わりの車は、同年一一月二四日、反訴原告に引き渡されている(乙第二一号証、反訴原告代表者本人調書(以下「本人調書」という。)三項)。
そうすると、本件交通事故と相当因果関係がある反訴原告の保管期間は、平成五年一〇月一日(反訴原告車が現実に保管された日)から同年一一月二四日(反訴原告車の代わりの車が反訴原告に引き渡された日)までの五五日間である。
2 そして、反訴原告車の車両保管料は、一日当たり一〇〇〇円(消費税を含まない。)である(乙第一号証)。
3 したがつて、本件交通事故と相当因果関係がある車両保管料(消費税を含む。)は、次の数式のとおり、五万六六五〇円である。
1,000×55×1.03=56,650
二 車両処分費について
反訴原告車は本件交通事故により全損となり(前記一の1)、反訴原告はその処分費として五万一五〇〇円を支出した(乙第二号証)。
反訴被告は、車両処分費が本件交通事故と遭わなくても支出しなければならないものであると主張する(前記第二の二2(二))が、全損を前提とする車両処分費と、そうでない通常の車両処分費とは異なると考えられるから、反訴原告が支出した右車両処分費が車両処分費が本件交通事故と遭わなくても支出しなければならないものであるとはいえず、反訴被告の右主張は失当である。
したがつて、反訴原告が支出した車両処分費五万一五〇〇円は、本件交通事故と相当因果関係がある。
三 休車損害について
1 反訴原告は、本件交通事故前一年間の売上げを本件交通事故後も得られたことを前提として休車損害を算定している(前記第二の二1(三)(1))。
しかしながら、反訴原告の売上げは毎年変化する(本人調書一一項・二五項・二七項・二八項・五一項)から、本件交通事故前一年間の売上げを本件交通事故後も得られたとはいえない。
また、反訴原告の運転手は、平成五年四月及び五月が一六人、同年六月が一五人、同年七月が一九人、同年八月ないし一一月が一八人、同年一二月ないし平成六年二月が一七人、同年三月が一六人となつており、出入りが激しく(乙第五号証、本人調書五八項)、本件交通事故前一年間と同一の人数・能力の運転手を本件交通事故後も雇い入れることができたとまではいえないところ、運転手の人数によつて反訴原告の売上げも変化すると推認できることからすれば、本件交通事故前一年間の売上げを本件交通事故後も得られたとはいえない。
したがつて、本件交通事故前一年間の売上げを本件交通事故後も得られたことを前提とする、反訴原告の休車損害の主張は失当である。
2(一)(1) ところで、反訴原告の本件交通事故前の売上げは、次のとおりである(乙第四号証、第五号証)。
ア 平成四年四月 一六五六万四〇〇〇円
イ 同年五月 一八四七万九〇〇〇円
ウ 同年六月 一七六一万七〇〇〇円
エ 同年七月 一七〇〇万四〇〇〇円
オ 同年八月 一三七〇万一〇〇〇円
カ 同年九月 一七三二万〇〇〇〇円
キ 同年一〇月 一七〇三万七〇〇〇円
ク 同年一一月 一七四五万七〇〇〇円
ケ 同年一二月 一九一八万三〇〇〇円
コ 平成五年一月 一五五九万二〇〇〇円
サ 同年二月 二一七八万一〇〇〇円
シ 同年三月 二五九二万一〇〇〇円
ス 同年四月 一四八四万七〇〇〇円
セ 同年五月 一七六三万三〇〇〇円
ソ 同年六月 一五二八万一〇〇〇円
タ 同年七月 一五七〇万一〇〇〇円
(2) また、反訴原告の本件交通事故後(なお、反訴原告が、平成五年八月二三日から同年一一月二五日までが休車期間であると主張していることは前記第二の二1(三)(3)のとおりである。)の売上げは、次のとおりである(甲第五号証)。
ア 平成五年九月 一四一八万九〇〇〇円
イ 同年一〇月 二一二〇万二〇〇〇円
ウ 同年一一月 一六〇〇万七〇〇〇円
(3) 前記(1)及び(2)の反訴原告の売上げによると、本件交通事故後に売上げが減少したとはいえない。
なお、反訴原告代表者は、本件交通事故により反訴原告車を使用できなかつたことで、運賃の値引きをしなければならなかつた旨供述する(本人調書一四項・三六項・三七項)が、千葉県中央青果株式会社以外の取引先に関し値引きをさほどしていない(本人調書一九項)から、右供述は、反訴原告車が使用できなかつたことで千葉県中央青果株式会社以外の取引先からの売上げが減少したこと裏付けとはならない(反訴原告車が、専ら千葉県中央青果株式会社の運送のために使用されていたことは本人調書二九項のとおりである。)。
(二)(1) かつまた、千葉県中央青果株式会社からの本件交通事故前の売上げは、次のとおりである(甲第一号証の一ないし四)。
ア 平成四年八月二六日から同年九月二五日まで 八五九万八三三〇円
イ 同年九月二六日から同年一〇月二五日まで 七五九万〇三六〇円
ウ 同年一〇月二六日から同年一一月二五日まで 七二七万九二一〇円
エ 同年一一月二六日から同年一二月二五日まで 八五〇万九七五〇円
オ 同年一二月二六日から平成五年一月二五日まで 五八九万三四七一円
カ 同年一月二六日から同年二月二五日まで 八二九万五〇一〇円
キ 同年二月二六日から同年三月二五日まで 七九八万五六五〇円
ク 同年三月二六日から同年四月二五日まで 八四二万〇三九五円
ケ 同年四月二六日から同年五月二五日まで 七五九万六七七五円
コ 同年五月二六日から同年六月二五日まで 七八五万七六三〇円
サ 同年六月二六日から同年七月二五日まで 七〇二万九〇一〇円
(2) そして、千葉県中央青果株式会社からの本件交通事故後(なお、反訴原告が、平成五年八月二三日から同年一一月二五日までが休車期間であると主張していることは前記第二の二1(三)3のとおりである。)の売上げは、次のとおりである(甲第一号証の一ないし四)。
ア 平成五年八月二六日から同年九月二五日まで 八六七万一二四六円
イ 同年九月二六日から同年一〇月二五日まで 七一九万二五九五円
ウ 同年一〇月二六日から同年一一月二五日まで 七三二万八九五五円
(3) 前記(1)及び(2)の千葉県中央青果株式会社からの売上げによると、本件交通事故後に千葉県中央青果株式会社からの売上げが減少したとはいえない。
なお、本件交通事故後に千葉県中央青果株式会社からの売上げが減少していない理由は、千葉県中央青果株式会社が反訴原告のお得意先であるため、千葉県中央青果株式会社に迷惑が掛からないようにその仕事をこなすため、運転手の勤務時間の延長等(このようなことは、通常、反訴原告では行われていない。)反訴原告内でのやり繰りをした結果によるものである(乙第九号証、本人調書一四項・一五項・三〇項・三二項・三五項・三六項・四六項・五四項。ところで、千葉県中央青果株式会社が、反訴原告の仕事の一部を他の運送会社に回した旨の乙第一七号証の記載及び同趣旨の原告代表者の供述(本人調書一六項)は、乙第九号証の右記載、原告代表者の右供述(本人調書三〇項・三二項・五四項)からして採用できない。)。
(三) したがつて、反訴原告の売上げの減少ないし千葉県中央青果株式会社からの売上げの減少もないといわざるを得ない。
3 以上のことからすると、反訴原告に休車損害は認められない。
四 結論
よつて、反訴原告の請求は、反訴被告らに対し、連帯して金一〇万八一五〇円及びこれに対する平成五年八月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限りで理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、主文のとおり判決する。
(裁判官 栗原洋三)